楽天馬のコメント

2009年04月19日

【競走馬の血統シリーズ その1】フェデリコ・テシオの血統理論

楽天馬です。

今週から私の備忘録的に競走馬の血統について、シリーズ化して随時アップしたいと思います。

まずは、フェデリコ・テシオです。競走馬の血統を語る上で、この人物はまずはずせません。
年間僅か10数頭程度の生産馬からリボー、ネアルコ、テネラニなどの世界の競走馬の血脈に大きな影響を与えた名馬や名種牡馬を多数生産し、「ドルメロの魔術師」の異名をとった生産者であり、馬主、調教師でもあります。

かなり昔に、私の作った別なサイト『競走馬の豆知識』でもウィキペディアの記事を参考にこのテシオの物語を掲載していますので、読んでみてください。
http://umanohanashi.seesaa.net/article/22095637.html

以下は、吉沢譲治著の『競馬の血統学』、『競馬の血統学〜母のちから』を参考に記事にしたものですので、詳細に知りたい方は是非この本を読んで頂きたいと思います。
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【フェデリコ・テシオの配合理論】

フェデリコ・テシオは、様々な種牡馬を繁殖に配合することで成功し、自分なりの配合理論を確立した人物で、その後血統理論としては根拠のないものとして、批判されたりもしたようです。

このテシオの配合の考え方の対極にいたのがノーザンダンサーを産んだE.P.テイラーで、彼はテシオが1頭の繁殖に様々な種牡馬を配合したのとは対照的に、同じ種牡馬を続けて配合して成功した人物ということになります。

これについて、「競馬の血統学」に興味深い一文があるので、ちょっと長いですが、重要な一文ですので以下に抜粋したいと思います。

(以下、『競走馬の血統学』より抜粋)
「〜イギリスの古典的な配合論に「最高の繁殖牝馬に、最高の種牡馬を」というのがある。もっとも、これは別に配合論などと大げさにいうほどのものではなく、その時代のベストにベストを配合するというのは、小学生にだって考えつく当たり前のことと言えば当たり前の配合方向である。

しかし、この当たり前の配合方法がくせものだった。その時代のベストとベストの配合は、かつてのセントサイモンの失敗がそうであったように、どうしても似かよった血統のサラブレットを作り上げていくことになる。

したがって短期的にはその配合で成功したとしても、長期的にはかならず血統の飽和、血統の袋小路、近親繁殖の弊害といったものをまねくことになる。

フェデリコ・テシオは過去の分析からそうした配合を危険と判断したのだろう。一頭の繁殖牝馬に配合する種牡馬を、なるべく同じにならないように意識して毎年変えていった。また、同じ種牡馬を何年も続けて配合するより、異なる種牡馬を配合していった方が、名馬が生まれる確率が高いという結論も、過去の分析から導き出していた。

〜また、一流競走馬が種牡馬となって大失敗に終わることもあり、そのとき徹底して同じ配合をしていようものなら、せっかく育てた繁殖牝馬の血統をみんなけがしてしまう危険性がある。ひとたび血統をけがしてしまうと、もとに戻すには何代もかかり膨大な時間と資金を必要とする。

〜こうしたリスクを抑える意味においても、フェデリコ・テシオの選択した配合方針は理にかなっている。これに対して、E・P・テイラーはまったく正反対の、つまり古くからの配合方針を選択した。たった一回のチャンスだけでは結論は出せないという考え方が、その根底にあったようだ。

人間だって夫婦が五人の子をつくったとして、同じ配合なのに顔も背の高さも性格も頭脳も運動神経もそれぞれちがう。何年も同じ種牡馬を配合してみなければわからないというわけである。これもまた理にかなっている。」ということです。

この話からテシオの配合理論が、多くのトライアルから生まれたものであることがわかります。

話は戻りますが、テシオは配合理論において、1近親繁殖、2ニックス(血統の和合性)、3最良の資質の種牡馬を選ぶこと、この3要素を重視していました。
しかし、一方で、近親繁殖には危険な落とし穴があることを著書に書き記しています。

(以下、『競走馬の血統学』より抜粋)
1,家畜における著書の極度の近親繁殖は、しばしば不妊を引き起こす。事実、ほかの馬よりも近親繁殖の度が強いサラブレットは、一般に生産率が良くない。

2,あるものは随時新鮮な血統と配合していかなければならない。だが、それは常に十分に選ばれたものとでなければならない。

3,不妊という手段によって、自然は人間の間違いを制限したり、あるいは排除したりする。

これは、過去の生産者の近親繁殖の成功と失敗を分析して導き出したものであり、自身の成功と失敗を加味しての結論であったということです。

2の新鮮な血統とは、異系繁殖を意味すると思われますが、雑種血統もこれに当てはまると思われます。

同じ2の「常に十分に選ばれたもの」とは、異系繁殖や雑種血統の配合においては、それは一流の競走成績であることが前提条件だということです。

雑種血統であっても一流の競走成績とは、この著書ではネアルコを取り上げていますが、実は近年で言えばサンデーサイレンスの母にもよく当てはまるものです。

強い近親繁殖の種牡馬や繁殖牝馬は、大成功もあるが、大失敗もあり、他の文献を読むと、後者の方が極めて多いことがわかります。

丈夫な水準級の競走馬をコンスタントに生産するのは、強いクロスはまったく邪魔なものにほかならないというのが、常識的な考え方であり、後に出てくる武市銀治郎氏の著書からも、強いクロスを持つ種牡馬で大成功したのはハイペリオンくらいであることがわかります。(このハイペリオンのクロスの成功の影には、また別な話がありますが、やがて出てきますので、ここでは飛ばします。)

もちろん、サラブレット自体、どんどん溯ればたくさんの同じ名前が血統表に出てくるわけで、吉沢譲治氏も、武市銀治郎氏の著書を読むと、どうやら”強いクロス”とは、4代以内のクロスを差しており、5代以降のクロスには大きな効用というか、作用はあまりないというのが、両氏の共通の考え方です。

さて、この『競馬の血統学』の中で忘れてはならない一文があります。
それが以下です。

以下、『競走馬の血統学』より抜粋

「フェデリコ・テシオの「早熟性とスピードこそが遺伝の源泉になる」という考えは、過去五十年間の1,000頭をこえる大レースの優勝馬を分析し、また血統においてはすべて七代までに、時には十二代に溯り注意深い研究をおこなって導き出したものである。

著書『サラブレットの研究』に、かれはこう書いている。
『クラシック級の素質をもったステイヤーの血統において、諸君は近い祖先にほとんど常に優秀なスプリンターであった馬の名を発見するであろう。

・・・持久力なるものは、それによって勝利を持続していくためには、時々4分の3マイル(1,200メートル)および1マイル(1,600メートル)の一流のスプリンターの血液によって、活力を付与されなければならない。

・・・私は、短距離においてスピードを示さなかったこの4,000メートル(アスコットゴールドカップ)の勝馬は、一般的に種馬となってから失敗だったことを発見した。

・・・その血統中に1マイルレースの優秀馬をもっていなければ、卓越した素質をもった馬を生産することは困難である。なぜならば、この馬はスピードと同意語である神経エネルギーの爆発に欠けているからだ。わたしの心に止めている原理は次のことである。

”長時間にわたるスピードは持久力を意味するが、短時間の持久力はけっしてスピードを意味しない”』

なぜ、現代競馬で伝統的なステイヤー血統の父系が衰退していったか。なぜスピードがスタミナを制するにいたったのか。それを解き明かしていくうえでひとつのヒントが、ここに隠されている。

のちに遺伝学が発達し、フェデリコ・テシオの節には科学的根拠にそぐわない点も出てきたが、名馬や名種牡馬の誕生の秘密すべてが遺伝学で解明されるわけでもなく、むしろかれのような経験にもとづいた考えの方が妙に説得力がある。

かつて長距離はスタミナや持久力が試されるレースだったが、フェデリコ・テシオの指摘したとおり、いまではマイルや中距離で使うスピードや瞬発力も要求される。したがって、ステイヤーといえども、その一方で優れたスピードや瞬発力も兼ね備えていないと、長距離の大レースを勝つことがむずかしい。

種牡馬としての成功確率も、長距離で活躍した馬より、短距離で活躍した馬の方がはるかに高い。『マイルを制するのが名種牡馬の条件』というのが世界の常識にさえなっているくらいだ。

フェデリコ・テシオが『サラブレットの研究』を書いたのは1940年代のことで、まだイギリス伝統の長距離競馬と、スタミナ豊かなサラブレットが世界の主導権をにぎっていた時代である。〜そうした時代において、現代の競馬を暗示するこれだけの内容を書き残したことは驚嘆に値する。」

ということですが、この一文は、血統表から判定するサラブレットの”スピードとは”ということを考えた時に、非常に参考になるものだと思います。血統表中にスピードに優れた血を探すことは、血統を見る上で非常に重要な要素の一つということになりますかね。

最後に、このテシオの言葉にある、非常に印象深い一文を本文から抜粋してご紹介したいと思います。
これは本当に興味深い一文でした。

(以下、『競馬の血統学』より抜粋)
「〜フェデリコ・テシオの言葉の中に”神経的エネルギー”というのがあった。
サラブレッドがほかの馬にくらべて気性の激しさや精神的に異常な興奮が目立つのは、近親繁殖によって進化してきたせいだといわれる。

しかし、この気性の激しさ、精神の異常な興奮こそが、サラブレットにスピードの進化をもたらしたと考えられはしないだろうか。すなわち、強度の近親繁殖が神経作用を高め、それが運動作用をも高めていったと考えれば納得できるかもしれない。

これはスポーツ選手になぜ興奮を促す薬物が禁止されているかを考えれば、納得できるかもしれない。極度に増加した神経の高ぶりが、筋肉にさらなる急激な収縮作用をひきおこし、その結果、さらなるスピードをうみ出す−サラブレッドにおけるスピードの進化をわたしはそう解釈している。

〜身近な例でいえば、サンデーサイレンスがまさにこれだろう。神経的エネルギーからくる激しさが競馬にいってマイナス面につながる血統が全体的に多い中にあって、これほどプラス面にはたらく血統もめずらしい。」

ということで、高いスピード値とその持久力の両方を求めてやまない現代競馬ですので、テシオの経験に基づく配合の考え方は、非常に参考になるものがあります。

以上、今回はフェデリコ・テシオのお話を中心に、サラブレッドの血統の見方、考え方についてお話ししましたが、今後とも私の備忘録的に、血統に関する様々な情報を発信していきたいと思いますのでよろしくお願いします。
posted by 楽天馬 at 15:19| Comment(2) | TrackBack(0) | 【POGニュースいろいろ】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
楽天馬さん
こんばんは
フェデリコ・テシオの配合理論勉強になりますね
競馬では血統は最も重要視されると言っても
言い過ぎではないですね
馬を選ぶ時には私も血統は最も重視します
牧場で馬を見ても特にサンデーの場合は
6月、キャロットも9月と冬を越してから大きく馬体も変わってきますし
やはり血統の比重がどうしても増しますね(笑)
今日の皐月賞もキョウエイマーチの仔トライアンフマーチも2着と見せ場十分!
ダービー出走権も取りましたね
SSと相性がよいノーザンダンサーのクロスの
配合ですね。個人的に好みです
それにしても幸四郎騎手のスタート直後から下げて最後のスパートに掛けたのは好プレイと思いました
前が有利の皐月賞で思い切った騎乗でした
ただ、アンライバルドとの差は着差以上に
大きかったですが善戦でしたね
弟にも期待ですね(持ってませんが。。。)

アンライバルドも超がつく血統背景ですが
母は高齢ですし、新種牡馬、高額馬でしたが
これに出資した出資者の方には脱帽ですね
アンライバルドもそうですが
SSに母父Sadler's Wellsもノーザンダンサーの直仔の配合

桜花賞もサンデーのブエナビスタに東京のレッドディザイアは母父Caerleonと桜花賞配合
大舞台で力を発揮するには血統は重要ですね

キャロットはこの世代牡馬G1で連続連対とこれからも非常に期待できる活躍ですね
やはりサンデーとの差は大きいですが
来年には牡馬クラシックホースが出てきても
不思議ではないですね
期待するのはフレンチバレリーナの07(まだこの呼び名がしっくり来ます)
祖母バレークイーンの血が開花すれば。。。
順調で評判も募集時から良かったですし。

牡馬、牝馬クラシック第一弾は
クラブ馬が共に連対。この流れが
NHK、ダービーと続けば楽しみですね
Posted by 阪神優駿 at 2009年04月19日 19:04
 フェデリコ・テシオのことなら、中島国治氏の本も面白いです。
 作者はテシオが亡くなったあと牧場に行きました。そこでテシオ夫人に話を聞き、テシオのメモを見ることができました。これらを元に、テシオの配合理論に迫っています。かなり独自色が強いもので、興味深いです。ただ、一口に生かすのは難しいのが残念です。
Posted by 野本竹馬 at 2015年10月25日 18:05
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