2009年04月26日

【競走馬の血統シリーズ その2】天の配剤

楽天馬です。

今、武市銀治郎さんの『二十一世紀を支配する血脈』を読んでいます。
こんなに血統を勉強したのは25年ぶりですね(笑)
ちなみにこれは、学生時代ですね(笑)

しかも、今回は前回(25年前)とはモチベーションが違って、実際に良い馬が誕生する血統背景の見方のコツを掴みたいと思って本を読んでいますので、本当に勉強になっています。

さて、私こと、それほど素直ではないので、吉沢譲治氏、武市銀治郎氏と読み進めても、なお、血の活性化の因子がほかにもあるのではと頭の中で模索しています。

つまりは、この尊敬する二人の大先輩の血統理論にしても、後付けされた部分が多分にある思う部分もあるわけです。

そして、読んでみて、むしろ絶対という血統理論は無いということに改めて気づかされます。

これまで、わかったことは、現在の競馬が高速競馬に向かっている中、必要とされるスピード値はどんどん上がっており、それに順応できた種牡馬が生き残る可能性が高いということですね。

人間のスポーツであるマラソンが、かつては典型的なスタミナ勝負のスポーツであったのが、近年1万メートルで活躍したスピードのある選手がマラソンに転向し、台頭してきて、今や一定のスピードを持続して42.195キロを走り、なおかつゴール数キロ前からのスプリント力もあわせて求められるようになってきていますが、それと同じように、競馬においても、スタミナ能力だけではもはや近代競馬では通用しなくなってきていて、マイラーのようなスピードでクラシックディスタンスを走りきれるスピード持続能力の高い馬が市場からも求められてきているということになりますね。

しかしながら、私が思うに競走馬がトップスピードで走れる距離にはやはり限界があって、よく保つ馬でも3ハロン程度が限界なのではないでしょうか。

そう考えれば、やはりベースにはスタミナの血がある程度必要であり、さらに言えば、ダービーに勝つような馬は、決め手もあわせて求められることになります。

この決め手のポイントが、前回書いた闘争心すなわり”野生”であり、その闘争心をゴール前の3ハロンだけ発揮することができる”聡明さ”が必要ということになります。

つまり、スピード値が高いこと、そしてやはりベースにスタミナの血が働いていること、さらに決め手となる闘争心をもっていること。特に、見のがしがちな、ベースのスタミナの血の善し悪し、そしてテシオのいうとおり、スピード値の高い因子をもつ競走馬が4代以内にいることは、近代競馬への適応性を見極め上で非常に重要だと気づかされました。

世界が求めるスピード値の高さを最も発揮してその血脈を伸ばしてきているのが、ミスタープロスペクターであるというのは、どの本でも共通の意見であり、今後日本の競馬が世界で通用するか否かは、そのミスプロ系の高いスピード値をその血統に取り込めるようになることは必須だと言えます。

そして、やはりクロスは体質的なマイナス面を強調してしまうということもこれは共通の意見でした。
クロスについては、ある特定の馬のクロスについては競走能力を上げる方にはたらくことがわかってきているようですが、わたしなりに複数の本を読んでみて得たことは、その馬がクロスに入っている馬の能力を確実に発揮するためには、血統表の中に、体質面をあげる方にはたらく、傍系血脈、零細血統などの血が入っていることが重要であると感じました。

例えば同じファラリス系でも、非ネアルコ系であるシックル系のネイティヴダンサー系→レイズアネイティヴ系→ミスプロ系、ネイティヴダンサー系→エタン系→サーペンアップ系、あるいは非ネアルコ系であるファラモンド系−トムフール系−バックパサー系などがそれにあたります。

また、非ファラリス系では、テディ系−Bulldog−BullLea、テディ系−ダマスカス系、さらにはブランドフォード系のマームード系、ブレニム系−Crepello→Bustedもっと傍系になるとセントサイモン系−プリンスキロ系、リボー系、そして日本に古くから入ってきていたトゥルビオン系−パーソロン系−シンボリルドルフ−トウカイテイオーなどがそれにあたります。

そしてある特定の馬を除くと、クロスがプラスに働く確率はやはり低く、一方で体質面でマイナスに働く確率が高いこともこれらいくつかの本から読みとくことができます。
つまりは私が何度かこのサイトで書いた雑種強勢ですね。
血が近いと、遺伝的に欠けている部分が同じ位置にあるため、同じ穴が空いた紙を何度重ねても穴が消えないように、そのマイナス面が相殺されませんが、血が遠いと、一方の遺伝的に欠けている部分と他方の欠けていない部分が、上手に補い合って、いわゆる紙に空いた穴が相互に重ならないわけですね。

ですからクロスというのは非常に危険な賭けなわけなんですね。
ところが人間は、やはりその可能性に賭けてしまうんですね。何故かと言えばその低い確率に賭けたくなるほど、当たった時の爆発力はすさまじいものがあるからにほかならないわけです。ハイペリオンなどはその典型と言えますね。
ちなみにクロスは、5代も6代も溯れば当然出てくるわけで、その馬の血の活性化に関係があるのは、4〜5代までという見方も、いくつかの本で共通の解釈であります。最近の血統表が4代までしか掲載していないのはその辺の理論によるところなのかもしれません。

もう一つわかったことは、その血が広がるにはタイミングすなわち広がる土壌が重要であるということですね。
日本にノーザンダンサーの血が蔓延しているところに、ヘイルトゥリーズンが爆発的に融合したのはその典型ですね。
今、日本ではどの生産者も、このヘイルトゥリーズン系の血と相性の良い血を一生懸命探しているわけですが、これまで読んだ本を見てみると、ミスプロ系は大きな可能性を秘めているようで、その点、キングカメハメハがブルードメアになったとき、あるいはキングカメハメハと母父サンデーサイレンスとの相性は非常に注目されるところです。

ヘイルトゥリーズン系との相性という点では、すっかりノーザンダンサー系の血の影に隠れてしまっているナスルーラ系にも、改めて注目をしたいところで、その点、チチカステナンゴは、いろいろな意味で輸入する価値のある種牡馬であったのではないかと私は思いますし、そういうところに目を付ける社台グループの先見力にはやはり素晴らしいものがあると思います。

それから、何度かこのサイトでも取り上げているファラモンド系−バックパサー系の直系であるシルヴァーチャーム、この血にも大いに注目したいところです。
おそらく直系としては、かなりの零細血統になっていますので、シルヴァーチャームの血は、世界のホースマンも注目していると思います。
日本は世界から名種牡馬を買ってきてはダメにしているということで、”種牡馬の墓場”と言われていますが、もしこのシルヴァーチャームの血を開花させられなければ、またまた世界の多くのホースマンから、そう呼ばれるのでしょうね。

以上、思いつくままに書いたので、支離滅裂なところもあるかと思いますが、参考にしていただければ幸いと存じます。

さて、本日は、吉沢氏が特に近親繁殖や血の広がるタイミングなどについて述べているところを中心に引用してご紹介したいと思います。ちなみにタイトルは私が勝手につけたものですので、本書とは関係がありません。ご承知おき下さい。

以下、(「競馬の血統学」より抜粋)

◆奇跡の血量について
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「〜セントサイモンに代わって新たに台頭してきた種牡馬の多くが、たとえ父系がちがっても、その体内にはセントサイモンの血を受けていたのである。

〜すなわち既にこの時代のサラブレッドのほとんどが、セントサイモンの血を父系か、母系のどちらか、あるいはその両方からクロスして受けていたのである。その割合は70〜80%に達していたと言われる。

〜したがって、この時代になると「18.75理論」つまり「奇跡の血量3×4理論」の配合がいとも簡単に作れるようになった。

〜この「奇跡の血量3×4理論」について説明しておきたい。字面から極めてむずかしい理論ような印象を与えるが、きわめて単純な近親繁殖の配合方法である。「ある1頭の種牡馬の血を、三代めと四代めの祖先に共有する場合(3×4)において優れたサラブレッドが生まれる確率が高い」という考え方であり、血量計算も単純だ。1代めは父と母が半々の血量だから50%、2代目は4頭いるから4で割って25%と計算していく。この方法だと3代目が12.75%、4代めが6.25%で、これを足した数字が18.75%になるわけである。

〜近親繁殖の度合いにも〜いろいろあるが、そのなかで名馬が生まれる確率がもっとも高いとされたのが3×4だった。

これは特に科学的な根拠があるわけではなく、あくまで古い時代の統計的なもので割り出した結論に過ぎない。しかしながら、「セントサイモンの再来をつくりたい」、「天才をつくりたい」と、あくなき執念を燃やす人々にとって、それが天から授かった成功への道しるべのように思えた。しかし結局のところは、何人かをのぞいてはほとんどの人びとが天才をつくり出すことは出来なかった。

もしセントサイモンの強い近親繁殖で次つぎと天才や秀才が生まれたはずなら、この父系はさらに発展していなければならない。ところが実際には、1930年代になるとセントサイモン系は、イギリスの種牡馬ランキングの上位から消え去ってしまったのである。

この事実は何を物語るのか。強い近親繁殖に走ったことが、セントサイモン系の衰退に追い打ちをかけたことの証明にほかならない。そして、それはやがてイギリス伝統の名門血統を衰退させることにもなっていくのである。」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ということで、やはり生産者はクロスのリスクを十分理解しておかないといけないようですね。

これからおそらく日本でもサンデーサイレンスのクロスが多く発生するような状況になっていくと思われますので、そうなればこのセントサイモンの悲劇と同じようなことが起こりうるわけですね。

<近親繁殖について>
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「むかしから「近親繁殖で生まれた名馬は遺伝力が強い」といわれてきた。

〜その例としてよく用いられてきたのが、海外ではセントサイモンの3×4の近親繁殖で生まれたハイペリオンであり、日本ではハイペリオンの3×4で生まれたトウショウボーイであった。

確かに過去の歴史をひもといても、現代のサラブレッドに影響を及ぼしている種牡馬には近親繁殖が多い。そもそも、サラブレッドの基礎となったエクリプスがそうであった。日本の成功種牡馬ではノーザンテーストが有名で、こちらはもっと強い2×3という近親繁殖で生まれている。

しかし、それをさして近親繁殖で生まれた名馬は遺伝力に優れている、とは決めつけられない歴史的な事実もまたある。

サラブレッドの歴史は強い近親繁殖の連続で、言ってみれば近親繁殖馬のオンパレードだった。つまり、むかしはサラブレッドに石を投げれば、かならず強い近親繁殖にあたったわけで、成功種牡馬に強い近親繁殖が多いのは、ごく当然のことなのである。
それは裏を返せば、失敗種牡馬にも強い近親繁殖が多かった、ということにもなるわけである。

こうした隠れた事実を認識することなく、ただただ強い近親繁殖に走り、種牡馬選択においても、強い近親繁殖成功馬に成功の可能性を見いだそうとするのは果たしてどれほどの効果が期待できるのだろうか。

過去ならともかく、現代においては、むしろ危険な選択のように思えてならない。
本書を読み進めばその理由がわかっていただけるかと思うが、いずれにしても成功は歴史に残り、失敗は歴史のかなたに消え去っていることを忘れてはならない。」

◆時代の要請
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「〜これに対して「完全な異系繁殖で生まれた名馬は遺伝力が弱い」といわれてきた。その根拠として、アメリカのセクレタリアトがよく例に出される。異系繁殖で生まれた歴史的名馬だったが、たしかに種牡馬としては期待を裏切るものだった。

しかし、この根拠もちょっと理解しかねる。一頭の種牡馬の失敗にはいろいろな要素があったはずで、それを異系繁殖だけに結びつけてしまっていいものがどうか。

そもそもサラブレッドの世界には、完全な異系繁殖のサンプル数そのものが少ない。イギリスでサラブレッドの生産がはじまって250年のあいだに、五代血統表のどこを見わたしても共通する祖先がない完全な異系繁殖のサラブレッドなど、果たしてどれだけ存在しただろう。

近親繁殖と同じサンプル数があって、そこから成功のパーセンテージが低いという結果が割り出せたなら、そのときはじめて遺伝力が弱いいえるのではないだろうか。

〜むしろ重要なのはその時代のニーズではないかと思う。
もっと具体的にいえば、その時代の繁殖牝馬がどのような血統を欲しているか、である。

したがって、過去は過去、現在は現在なのであり、過去の成功の全てを現在にあてはめること自体が根本的に間違っている。

過去のおよそ300年のサラブレッドの血統の流れは、それぞれの時代によって、
「近親繁殖で走る大きな波」、
「異系繁殖で走る大きな波」、
「特定の血統が猛威をふるう波」、
「血統の飽和で異父系が台頭する波」といったものがあった。

これを現代の流れにあてはめれば「血統の飽和で異父系が台頭する波」「異系繁殖で走る大きな波」の状況にあるといえるだろうか。」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ということですが、日本の競馬界はまさにサンデーサイレンスの台頭を経て、サンデー系の血が蔓延に向かっています。

やがて飽和するまえに、当然異系の血の注入が必要であり、そうすることで、日本競馬は衰退することなく、次のステージに向かえるのではないかと思います。
あるいは古き良き日本の零細血統が、改めて見直される可能性も十分にあり、特にトゥルビオン系のトウカイテイオー、メジロマックィーンらの産駒とサンデー系との融合により、新たな血の台頭があるかもしれません。

最近読んだ吉沢氏、武市氏らの本の中に、今後種牡馬スペシャルウィークの活躍に注目したいというコメントが多分にありましたが、スペシャルウィークの母キャンペーンガールは、日本古来の名牝系シラオキに七度日本のリーディングサイアーとなったヒンドスタン、凱旋門賞馬セントクレスピンと配合された馬で、世界の潮流を考えれば、十分に異系な血脈を抱えていることから、時代の流れを踏まえると、今後注目される血を残す可能性は十分にあります。もしかしたら、キャロットの募集馬のスペシャルウィーク産駒にも、世界の主流血脈になるような牡馬が含まれているかも知れません。

そう考えると、それもまた楽しみですね。
posted by 楽天馬 at 17:11| Comment(2) | TrackBack(0) | 【POGニュースいろいろ】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
楽天馬さん
こんばんは
凄く勉強になりましたね
確かに大舞台で活躍しているのはSSの血が
今はなくてはならないですが
時代毎に繁栄衰退を繰り返しますからね
まぁ競馬意外にも当てはまりますが。。。
それにスペシャルウィークは日本古来の血脈が流れ
異系と言えますね
スタリオンの方もよくわからないと表現されてますが
これから配合によっては注目の血統馬が出てくるかも知れませんね
キャロットと言うことに限定すれば
スペシャル産駒ではなく
母父スペシャルウィークからそう言う名馬が
出てきたら思い入れも深いですよね
トゥエルフスナイトなんかがそうなれば面白いですよね
でも、募集馬を選ぶ時にはノーザンダンサーのクロス、SSの血を選んでしまうのですが。。。
Posted by 阪神優駿 at 2009年04月27日 22:16
楽天馬さんこんばんは。昨日のフローラステークスは人気のミクロコスモスはじめキャロ馬のピースエンブレムにマイティースルーまで二桁着順とは本当にガッカリです。今年のオークスはブエナビスタが勝利するのでしょうか・・・。次週は天皇賞ですね。キャロ馬の出走が無いのは残念です。中長距離の古馬オープンでキャロ馬の応援が出来ないのは寂しい限りです。出資馬のセイルオンザグラスが将来この条件で活躍することを夢見ています。
Posted by キャンディウィップ at 2009年04月27日 22:21
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