2009年05月06日

【競走馬の血統シリーズ その4】近親交配と異系交配

楽天馬です。

今回も武市銀治郎氏の『二十一世紀を支配する血脈』の一部を使って、サラブレッドの血統について検証していきたいと思います。

これまでもこのサイトでもご紹介しています雑種強勢ですが、私なりに分析してわかったことはクロスの弊害、すなわち体質的なマイナス面が近親交配には少なからずあるということですね。

セントサイモン系の衰退についても、セントサイモンのクロスの蔓延による結果であるということは、過去に多くの血統の研究をされてきた方が指摘されていることで、歴史的な検証がある程度済んでいると考えて良いと思います。

しかしながら、サラブレッドは、血統表をどんどん溯っていくと、同じ血が複数存在し、クロスだらけの動物だということがわかります。

では、クロスの影響というのは、どのくらいまで検証するのが妥当なのか。
今回は、その辺について武市氏の見解を中心にして、検証してみたいと思います。

まず取り上げなければならないのは、強いクロスを持つ種牡馬の血脈に繁栄した血脈はあまりないという事実を取り上げなければなりません。
実際、クロスが強い種牡馬は、産駒に体質面のマイナス要素を残しますので、歴史上繁栄した種牡馬はクロスが少ない種牡馬が多いのは統計上明らかのようです。
ただし、私が個人的に調べた範囲では、1世代目(遺伝学上のF1)について限定すると、例外的に活躍馬を多数出す種牡馬がいたのも事実で、その点クロスの強い種牡馬の産駒全てを否定はしてはいけません。
しかし、長い競馬の歴史の中で主流の血脈となるためには、特定の血の濃さはあまり歓迎されないようです。

ちなみに私がクロスといっているのは、5代血統表の中の話で、それより溯っての話ではありませんので、ここで申し述べておきます。

さて、主流と言われる血脈の中に、強いクロスも持ちながら非常に強い影響力を発揮してきた血があります。
それはハイペリオン、ファロス、フェアウェイですね。

この3頭はいずれもセントサイモンの3×4のクロスを持っています。
この3×4のクロスは同一馬の血の量が18.75パーセントで、俗に『奇跡の血量』と言われますが、統計上は、このクロスを持った馬が走る確率はかなり低いと言われています。

すなわち、たまたま爆発的な活躍をした何頭かの名馬がこのクロスを持っていたことに由来します。
日本ではそれがトキノミノルであると言われているようです。
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【ワンポイントウィキペディア】

◆奇跡の血量
奇跡の血量(きせきのけつりょう)は競走馬の交配を行う場合の血統理論のひとつ。
インブリードで、4代前祖先(6.25%の血量)と3代前祖先(12.5%の血量)が共通の馬となる場合「4×3のインブリード」という。そのときの血量は6.25%+12.5%=18.75%となり、これを特に奇跡の血量と呼ぶ。
近親交配は、その共通する祖先の能力を大きく引き出せるといわれる反面、濃すぎる血量は虚弱体質や気性難など弊害もあるといわれている。そのギリギリのバランスがこの奇跡の血量18.75%と考えられている。しかしこれは経験則によるところが大きく、科学的な根拠には乏しい。
ただ、日本においては血統論や競走馬の配合の概念としては歴史のあるものの一つで、1951年にトキノミノルが、10戦全勝で東京優駿(日本ダービー)を制した際に紹介され、定着したといわれている。

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ということで、この3×4のクロスを持った馬には、タニノギムレット(グロースタークの3×4)、ヒシアマゾン(ニアークティックの3×4)、アサクサデンエン(ヘイローの3×4)、デルタブルース、エルコンドルパサー、メイショウサムソン、スズカフェニックス(以上、ノーザンダンサーの3×4)、ドリームジャーニー(ノーザンテーストの3×4)、トウショウボーイ(ハイペリオンの3×4)などがいます。

もちろん走らなかった馬で、この3×4のクロスを持った馬は膨大にいますので、統計的に走る確率としては、あまり決め手になっているとは言えないと思いますが、走った馬にこのクロスがあるとどうしても目立つので、馬主がこの血量を欲しがったりして・・・
すると、生産者も市場のニーズとしてこういうクロスを持った馬を意図的に作りたがるふしがありますね。そうやってセントサイモン系は衰えていったんですが・・・

さて、話を戻します。
武市氏は、この3×4のクロスを持ちながら主流血脈を形成する種牡馬を冷静に分析しています。
そして、その中にクロスのマイナス面、遺伝的負荷を緩和、あるいは資質を強化させる強い活性遺伝子の存在に言及しています。

そして、少なくとも主流という血脈にこのクロスが内在するという事実は、3×4のクロスはなんらかの別な作用があれば、その弊害は減らすことが出来るという結論を得ています。

一方、4×4よりも薄いラインブリードは、許容しても良いということも述べています。
つまり4×4、4×5、5×5などのクロスは、その遺伝的負荷は極めて少ないという考えですね。
さらに言えば、根幹種牡馬となる条件としては、むしろこの4×5、5×5のランブリードを内包していた方が望ましいという結論に達しています。

この結論は私がこれまでたくさん見てきた血統表におけるクロスの位置づけ的にもしっくりするので、これについて書かれた部分を以下に抜粋してみたいと思います。

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武市銀治郎著『二十一世紀を支配する血脈』より抜粋

▼インブリードはマイナス面の分析から行うべき
サラブレッドの創成依頼、欧米では血統のクロスに関して、3×4より濃いクロスをインブリード、4×4より薄いクロスをラインブリードと区分して呼称されてきた。この呼称区分は、3×4より濃いクロスにおいて近親交配の諸問題が表出することを示唆している。

〜インブリードの評価においては、先ず遺伝的負荷(マイナス面)を冷厳に分析し、次いで資質強化面など(プラス面)を分析しなければならない。

〜近親繁殖がない健康な血統とは5代以内に血統クロスが全くない(5代クロス)のを判断尺度にするのが通例である。

▼近親交配の許容範囲
筆者は、「アウトブリード的交配によって血が活性化される。できるだけ近親繁殖を避けて健康で逞しい血統を目指すべきである」という基本的な考えを持っている。

しかし、生物界では近親交配によって突然変異のような優秀な個体が生まれ、それが種をリードしてきたことも事実であり否定してはいけない。それではどの程度のクロスが許容され、さるいは許容されないのだろうか?

〜筆者は、〜2×3よりも濃いインブリードは許容されなく、4×4よりも薄いラインブリードは許容してもよいと考えている。

それでは、3×3、3×4インブリードはどうなのか?
それは、「これらのインブリードでは、なんらかの『血の活性化』によってその弊害が相殺された場合には問題がない」というのが結論である。

〜近親繁殖理論は、「アウトブリードによって活性化された逞しい健康な遺伝子を持った馬」がその背景にあってこそ成立するのである。

〜「血の活性源」 などのアウトブリード的配合によって生まれた「活性化された逞しい遺伝子」が、例外的に評価される近親繁殖においても、その血統の基盤になっており、あるいは、その隠し味になって作用しているのである。
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ということですが、クロスの評価というのは、いつも迷うものですよね。
私は、これまでフサイチコンコルドを基準にしてクロスのマイナス面を考えてきたんですね。

フサイチコンコルドは、ノーザンダンサーの3×3のクロスを持っていて、かなり前にこの馬の成長過程を書いた文献を読んで、常に熱発がつきまとい体調管理が非常に難しい競走馬だったということがわかて、それ以来3×3のクロスは体質面で異常な負荷をかけるというのが、ずーっと感覚的に頭に残っていて、3×4より薄いクロスの馬しか検討対象にしてきませんでした。

ラウニカに出資する時、Where you Leadの3×3のクロスは、すごく体質面が心配だったんですが、牝馬のクロスはどんな影響があるかわからなかったので、大丈夫かなーとか思って出資したんですね。
もし、その時にこの活性遺伝子の存在を勉強していたら、違う評価をしていたかもしれません。

もうひとつ、私がこの理論を読んだ時に、頭に浮かんだ馬にノーザンテーストがあります。
レディアンジェラの2×3のクロスですね。

武市銀治郎氏は、その点について、本書でこの種牡馬の成功の根拠を母系に求めています。
そして、アスワン、アンバーシャダイなどが後継種牡馬として成功するとよんでいます。

私も、このノーザンテーストのクロスを、カバーしている活性遺伝子は何かということを検討してみると、それがありえるのは、母父であるVictoria Parkしかなくて、父チョップチョップがテディ系、母父ウィンドフィールズがフェアウェイ系、さらに母母父がOsirisがストックウェル系でまったくの傍系ということで、北米の零細血統と傍系血統しか入っていないことにその根拠を感じます。

そしてこのVictoria Parkの競走成績も立派であることから、母系に入って十分に血を活性化させる作用を持っていたということになりますね。サンデーサイレンスの母父Understandingも似たような感じですよね。

ただし、武市氏は、アンバーシャダイ、アスワンらがノーザンテーストの系統を繁栄させると述べていますが、私はノーザンテーストの2世代目F2での繁栄となると、非常に難しいと言わざるを得ないと思っています。
それはやはり強力な後継種牡馬が現れなかったという点と、新しい物好きの日本人には、十分飽きられるだけ血が蔓延してしまったという点にあります。

世代的にあり得ない話ではありますが、仮にサンデーサイレンス、トニービン、ブライアンズタイムらと同時か、もしくは前後して輸入されていたら、ノーザンテーストにはもっと強力な種牡馬が多数誕生していたかも知れないなーと、私はそう思いながら本書を読んでいました。

ということで、次は武市氏が総括的にまとめている「血の活性化論」について書いてみたいと思います。

以下参考までに・・・。

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【ワンポイントウィキペディア】

◆Victoria Park
カナダの大馬産家E.P.テイラーの生産馬。2歳時にそれぞれ芝とダートのカナダ2歳王者決定戦・コロネーションフューチュリティーステークスとカップアンドソーサーステークスを制し、カナダ最優秀2歳牡馬に選出。3歳時にはアメリカに遠征し、ケンタッキーダービーで3着、ブリークネスステークス2着と健闘した。カナダに戻った後は同地のダービーに当たるクイーンズプレートをレコードタイムで制し、この年のカナダ年度代表馬および最優秀3歳牡馬に選出された。19戦10勝・うち重賞6勝という成績を残し、3歳をもって競走馬を引退。故郷ウインドフィールズファームで種牡馬となった。


種牡馬入り後は、1970年から1972年まで3年連続でクイーンズプレート優勝馬を輩出するなど活躍したが、それ以上にブルードメアサイアーとして大きな実績を残し、エプソムダービー、アイリッシュダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスを制し種牡馬としても活躍したザミンストレルや、フォレ賞の優勝馬で日本で10度のリーディングサイアーを獲得したノーザンテーストなどに影響を与えている。ザミンストレルが大活躍した1977年にはイギリス、アイルランドでリーディングブルードメアサイアーを獲得。これらの功績が認められ、カナダ競馬の殿堂入りを果たしている。


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posted by 楽天馬 at 09:53| Comment(1) | TrackBack(0) | 【競走馬の血統】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
楽天馬さん
こんばんは
今日のマイルカップはジョーカプチーノの勝利でしたね
キャロット勢は残念。ダービーではトライアンフマーチに期待ですね
ジョーカプチーノの血統は
Northern Dancer 5 x 5 と言うことは 6.25%
と言うことになりますがやはり
大レースではNorthern Dancerと言うイメージですね
2着のレッドスパーダは愛馬ですがこの馬も
Northern Dancer 5 x 4 で9.38%ですね
やはり偉大な血脈です
近いうちにサンデーのクロスがトレンドになって行くんでしょうね
今日のレースはゲットフルマークスはハイペースでしたが
ジョーカプチーノは仕掛けたのが坂上からでそこからの伸びで2馬身差で勝利しました
騎乗も見事でしたし、タイムも破格のレコード
愛馬は2着でしたが今日は勝った馬が強かったです。脱帽ですね
これぞマイルのスピード競馬と言うところを見せてもらったレースでした。
マンハッタンカフェ初のG1勝利。今年はブレイクしてますね
オークスにも有力馬がいますし楽しみです
そう言えば、サヴァランが入厩に向け移動しました。もうじき2歳戦ですね。。。
競馬をしていると年を取るのが早い気がしますね(笑)
Posted by 阪神優駿 at 2009年05月10日 22:09
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